Phase3 2003-2004
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講 演 後 記
日時:平成15年10月22日(水)19:00〜
■講師 : 日本舞踊飛鳥流三代目家元 飛鳥 左近
 : はんなりと〜舞踊家・左近ものがたり
Power30’s Thirdの第2回例会は、楊川悦子氏ご担当の分科会です。楊川氏の中学時代からの同級生である、日本舞踊飛鳥流三代目家元の飛鳥左近氏に講演をしていただきました。私たちと同年代ながら、200名のお弟子さんを率いる家元なので、お話が聞けるのをとても楽しみにしていました。私も講演当日に始めてお会いしましたが、お聞きしていたとおりとても気さくで素敵な方でした。

数々の受賞歴を持ち、最近では松竹座での「阿修羅城の瞳」というお芝居の振付をされたりで、大変なご活躍中です。お父様が旗揚げされた「日本舞踊アカデミーASUKA」の第一舞踊手としても、数々の舞台に立たれていますが、まずはこの舞踊団がテレビの「誰でもピカソ」に出演されたときのビデオを拝見しました。私は始めて拝見したのですが、大変驚きました。日本舞踊の群舞で、BGMが「コーラスライン」で、みなさんが帽子を持って踊るというものでした。講演の最後にも、ブロードウェイミュージカルの曲を使って踊っている作品のダイジェスト版のビデオを見せていただきましたが、見慣れてくると、踊りは当然しっかりとした日本舞踊であり、歌舞伎の一場面を演じてらっしゃるのですが、音楽がたまたま洋楽というだけなので、限りなく「歌舞伎」に近い感覚で見せていただきました。

左近氏ご自身は生まれたときから舞踊に囲まれて育ち、気がついたらお扇子を持っていたという状況だったようですが、中学の時にはじめて「勉強と踊りの両立」という悩みにぶち当たり、そのときに聞いた「忍耐と努力」という言葉を今でも覚えていると、涙ながらに語られていました。一般の家庭とは異なり、背負うものがたくさんある左近氏ならではの悩みであり、苦労であったと思います。

よく言われるように、日本舞踊の世界はとても閉鎖的で、家元制度自体もかなり不透明なものとなっています。大学のときに舞踊に目覚め、群舞の美しさにひかれてアカデミーを立ち上げられたお父様とともに、3年で家元になれる制度を構築したり、日本舞踊の世界に風穴を開けるべく、いろいろな活動をされています。お父様がアカデミーを立ち上げた当初、やっとメンバーもそろいこれから!というときに、一人ずつメンバーが辞めていき、最後に一人だけ残ってしまって途方にくれていたら、実は辞めた人達がそれぞれ外で3つの舞踊団を作っていたということが発覚したそうです。この一件以来、人を育てることの難しさを体感されたお父様は、人を育てるときに見返りを期待したら絶対離れていくということを学ばれたそうです。日本舞踊でもベンチャー企業でも、組織である以上発生する問題は同じなのだということがよくわかりました。

もともとはバレエの群舞の美しさを目指して作られたアカデミーですが、バレエと日本舞踊では表現の方法がまったく異なるそうです。バレエはヨーロッパ文化が基盤にあるので、天にまします神に向かって、「上へ上へ」と伸び上がる舞踊であるのに対し、東洋文化に根ざす日本舞踊は、大地の神のために「下へ下へ」と腰を落として舞う舞踊だそうです。「月を見る」という表現ひとつにしても、バレエだと高く舞い上がるのですが、日本舞踊だと、実際に左近氏が演じてくれましたが、その場で顔と手だけでぐるっと180度を指し動いて表現するそうです。ほんの一瞬の動きでしたが、日本舞踊の真髄がすべて凝縮されているようで、鳥肌が立つような思いでした。ここでも左近氏は「芸術は人格と一致するものであり、経験したことしか表現できない」という言葉を引用されてました。

日本舞踊といえば、その不透明さもさることながら、「お金がかかる」というイメージも根強くあります。一部のお金持ちによって、本来は修行を積まなければ踊れないはずの舞踊の大演目を、お金さえ積めば踊れるようにされてしまったことが、日本舞踊の堕落のひとつであるというご指摘もありました。ただ、ひとつの公演をすると大変なお金がかかってしまうことも事実で、かつら・地方・鳴物・狂言・大道具・セット・衣装など、公演の収入からは到底まかないきれないほどの出費だそうです。今までの先人達は「いいものを作るためなら、いくらでも金をかけろ!」という姿勢だったそうですが、左近氏はそれではこれからはもう廃れる一方だという危機感を持ってらっしゃいます。ブロードウェイでは一般的な「プロデューサーシステム」を例に挙げられ、文化と経済をつなぐなんらかの方法があるのではと、模索されているそうです。

今後はさらに、左近氏ご自身が日本舞踊のライブを行っていきたいと思われており、いろんな活動をされていくようです。また、「日本舞踊アカデミーASUKA」を、日本にはまだ存在しない国立舞踊団にしたいという夢もおありのようです。私たちも日本舞踊や伝統芸能を、「おばさま方のご趣味」などどして遠目に見ているのではなく、経済のもとにあるのは「文化」であるという認識のもと、これからも左近氏のような方々の活動に触れていきたいと感じた講演でした。

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