第12回Power30’s例会―平成14年 7月25日(木)―

「マスコミの現場から〜日本経済・関西経済の再生への道を考える」

読売新聞大阪本社 経済部長 松尾徹氏

「講演後記」

1年間開催してきたPower30’sも、今回の例会をもってひとまずは終えることになりました。その記念すべき最終回の今回は、「マスコミの現場から〜日本経済・関西経済の再生への道を考える」という題名で、読売新聞大阪本社の経済部長である松尾徹氏にお話をしていただきました。最終回ということで、広く経済全般を概論的に語っていただきたいという思いで、松尾氏にお願いをしました。様々な資料を持参していただき、ご自身で書かれた記事を含め、実際のデータを前にお話をお聞きすることができたので、みなさんにとってもわかりやすい講演であったと思います。

現在、日本は出口のない不況にみまわれていますが、日本経済の再生への道を探るとともに、それと関連付けたところの、関西経済の現況・悪さ加減についても、言及されました。関西経済は、本社機能が東京に移転し、生産機能である工場が中国に移転することによる、「2つの空洞化」に加え、「そごうの倒産」「幻の大阪五輪」「マイカルの破綻」という「3つのショック」に遭遇している状態であると言われています。さらに、失業率はワースト234位を大阪・京都・兵庫が占めており、大阪圏の人口流出はこの278年間、転出超の状態が続いているそうです。日本のあらゆる地方のタクシーの運転手さんが「大阪の景気が日本で一番最悪」と言っているのも、うなづける気がします。

そんな中で、2000年と比較して、2030年に人口が増加する県が国内で4つだけあるそうです。沖縄県・東京都・神奈川県、そして関西圏である滋賀県の4県だそうです。そのうち特に滋賀県は、30年をかけて人口が唯一伸び続ける県ということのようで、それはかなり意外なお話でした。各社が研究開発拠点を琵琶湖近辺に移転している話しは、聞いたことがありましたが、ここまで人口が増え続ける見込みになっていることは、全く知りませんでした。

また、関西経済のこれまでとこれからをお話されるにあたって、アメリカ経済との比較をいくつかされていました。もともと、アメリカ経済の強みとされている「多様性・開放性・流動性・創造性・柔軟性」は、実は大阪の良さでもあるというものです。1989年に、アメリカの強さを説いた「第三の世紀」の著者、ジョエル・コトキン氏へのインタビュー記事を引用され、アメリカの3つの強みは「移民」「広大な土地」「企業家精神」であり、一方で日本の若い人は保守的で、大企業に安住しているという点を上げていらっしゃいます。当時は、日本とアメリカの経済的な力関係が、現状のようになるとは誰も予想していなかったので、これはかなり先見性のある記事だったようです。

その他にも、松尾氏が独自で作成されている、ここ10年くらいの公定歩合・日経平均株価・円ドルレート等の推移表をいただきましたが、それを見ると、この数年で景気がどんどん悪くなっているのがはっきりと数字で示されていました。日経平均株価が、1995年に19,868.15円をつけているのを見ると、ああそんな時代もあったなあと、感慨深く思ってしまいます。

日本、特に関西経済が落ち込んで久しいと言われています。そのたびに、関西はもともと、インスタントラーメンや回転寿司を生み出した、ベンチャー精神あふれる土壌であるという議論がされています。しかし、いつまでも過去の栄光ばかり見ていてもしかたがありません。最近では、医薬品製造での強みを生かして、バイオ産業が発展してきたり、新しい動きが少しずつ生まれてきているようですし、私達も関西活性化になんらかの貢献ができればと考えてしまう講演でした。

「講師裏話」

今回の講師である松尾徹氏は、読売新聞大阪本社の経済部の中でも、特にベンチャー関連の案件にたくさん携っておられ、その関係で私も以前から、何度かお顔は拝見していました。私が受付をやっている、ベンチャーコミュニティというベンチャー関係者の交流の場として立ち上げられた会や、ベンチャー企業を応援する集まりで、何度かお会いしていました。

今回、Power30’s例会の最後のテーマを選定するにあたって、ちょっと大きいテーマがいいなと考えていて、これまでにない「経済全体」を扱うテーマにしようと思ったときに、思い当たったのが、マスコミ関係者である松尾氏でした。たまたまある会の会合があって、その際に簡単に趣旨をご説明したところ、「いいですよ」と快諾してくださいました。さらに、こちらの台所事情までも勘案してくださって、破格の講師料を提示してくださり、恐縮したものでした。「30代を中心とした会で〜」と説明をすると、「えっ、鹿島さんって30代だったの?20代だとばかり思ってたよ(苦笑)」という、お茶目な突っ込みを入れてくれたりと、講演前からなごやかな雰囲気が漂っていました・・。

どんな話しをすればいいのかというご質問に、こちらが「アメリカに駐在しておられた経験をもとに、アメリカの経済復興と、日本・関西経済の今後というあたりのお話をしていただければ」とお願いし、「気の張らない、簡単な会ですから」とご説明しました。でもその後、Power30’sにも何回か来てくれた、松尾氏の部下の方が、「みなさん熱心に、メモを取りながら聞いてますよ」とおっしゃったようで、当日はたくさん資料を準備していただいて、気を使わせてしまって申し訳なかったかなとも思いましたが。

講演の前にも、「人前でしゃべるのは苦手だから」とか「しゃべるのが苦手だから書く仕事を選んだのに」とか、いろいろおっしゃっていましたが、データに基づいた、誠実なしゃべり口で、いつもついつい聞き入ってしまいます。当然ながら関西の財界にもお顔が広く、懇親会の時にも、「関西の財界も、昔と比べて経営者が小粒になってきた」とか、「関西でももっと女性の企業家が活躍すればいいのに」とか、いろいろなお話をしてくださいました。ちょうど、関西経済を牽引すべき、USJの様々な不祥事が発覚してきた時期でもあったのですが、USJはもともと、マスコミ対応が悪いので有名だったようです。広報がいちいちアメリカの本社にお伺いを立てるので、情報がタイムリーに流れてこないということをおっしゃっていましたが、その後続々と報じられるニュースを見ていると、そのような体質であることも、なんとなく理解できる気がしました。良くも悪くも、マスコミ・媒体はうまく使わなければなーと実感しました。

いろいろな方とのおつきあいも深く、「あのニュースのほんとのところは・・」というネタもたくさん持ってらっしゃるに違いないので、またぜひ機会を設けて、裏話をいろいろとお聞きしたいものです。

「会員の声〜講演の感想」「本日の講演内容の感想をお聞かせください」

・人口が増え続けるのは滋賀県だけというお話が印象に残りました。

堂本 郁美

 

・「関西経済活性化」とは良く聞きますが、関西にこだわる理由は無いと思います。理由があるとして、要は関西に投資されれば景気は良くなると思うのですが、投資されにくい要因が関西には多い訳で、その理由は関西人の長所と思われている部分だと思います。

福島 康生

 

・滋賀県の人口が増えるというのは意外でした。大阪のベッドタウンなら淡路島でも岡山でも可能性がありそうなのですが。

石原 由佳

 

・お話の内容が、とても広い見識に基づいた話しだと思いました。ということは、自分の見識に偏りがあるということであると、再認識しました。

武貞 義和

 

・マスコミの方のお話を直接うかがう機会はないので、とても興味深くうかがいました。やはりいろいろな世界をごらんになっているので、私達専門家のような「タテ」の思考ではなく「ヨコ」の思考でいらして、とても広がりのあるお話でした。Eメールアドレスをいただいたので、今後も何かあれば「頼らせていただきたい」と思います。

山口 里美

 

・今日の講演内容は、現在私が働く会社にもあてはまります。何かをしなければならないと常々話していますが、なかなかうまくいかないです。

埴岡 則子

 

 

「さらに詳しく知りたい・聞きたいと思ったことがあればお聞かせ下さい」

・関西経済人の裏話

福島 康生

 

・企業の工場がアジア特に中国に進出していますが、企業のコスト競争の面ではメリットがあるとは思いますが、日本に本当にメリットがあるのでしょうか。

石原 由佳

 

・今後の関西経済の行方など。

埴岡 則子