第11回講演会・懇親会―平成14年6月11日(火)―
6月のPower30's第11回例会は、本町の「うお清」という老舗のお料理屋さんで、玉乃光酒造鰍フ宇治田宏氏に、「日本酒の現場から〜いい酒作りはいい米作りから」という題名で、お話をしていただきました。
題名にあるとおり、玉乃光酒造鰍ナは米作りからこだわっておられて、当日も、酒作りに主に使用されている、備前雄町の背の高い稲穂を持ちこんでいただいての講演になりました。

講演開始前に、食前酒代わりにと振舞われた「クムイス」というミルク酒を飲みながら、まずはクムイスについてのご説明をしていただけました。
クムイスはアルコール度数2%で、ヨーグルトのような味のするお酒で、シルクロードでは貴重なタンパク源となっていたもののようです。
現在ではロシアにおいて、このクムイスが肝臓や胃にとてもよいということが発表されているようです。
なんともいえず後を引くおいしさで、10名程度でペットボトル1本分を早速空けてしまいました。

続いて、日本酒の世界にはまだ「戦後」が来ていないという話をされました。
戦前・戦中の物がない時代の苦肉の策として、米で作った日本酒にアルコールを混ぜていたのが、現在のような米余りの時代においても、原価を下げるためにアルコールを混入して日本酒を作っているメーカーがほとんどだそうです。
日本酒は当然大半が米のみからできているものと思っていましたが、アルコールを添加せず、純粋に米だけで作られているのは全体のなんと8%程度だそうです。
アルコールを添加すると、原価の高い米のみを使った場合に比べ、安く作ることができますが、当然お酒の純度が下がるため、いわゆる「悪酔いするお酒」になってしまうようです。
「玉の光」が二日酔いをしないと言われるのは、米100%のお酒だからだそうです。
さらに、酒米は食用米とはまったく異なる種類であるため、酒造メーカーの需要があれば減反政策を行う必要がないにもかかわらず、相変わらず食用米と同様、酒米についても減反政策を行う食糧庁に対しての批判もされていました。

また、酒税についても言及され、日清・日露戦争のとき、その戦費の3分の1は酒税からまかなわれていたとか、ビールの酒税は1リットル当たり222円であるため、乱立した地ビールのほとんどが酒税が払えずつぶれていった話などをされていました。
酒税は税金とはいえ、ちょっと特殊な税金なので、税務の専門家でもわからない世界ですが、蔵出しベースで課税される酒税についても、これでちょっと触れることができた気がしました。

次に、宇治田氏ご自身が、海外に「玉の光」を広めるためのレストラン等立上げプロジェクトに関与されていた関係で、海外からみた日本、真の国際化とは何かというお話にもなりました。
浮世絵が日本ではなく海外で最初に評価された話に始まり、日本はとかく、西洋文化に傾倒し、自分の足元を見失いがちで、明治からずっと「鹿鳴館」を引きずっているというご指摘をされていました。
このような変革の時代にこそ、足もとにある自国の伝統を見据え、自国のアイデンティティを確立することが大切だということのようです。
結局、国際化とは西洋の真似をすることではなく、自国で誇れる文化を大事にし、相手に尊敬される文化を形成していくことが大事だということを強調されていました。
浮ついた流れを追うのではなく、相手に自国を誇る、また自国の文化を説明することのできる、きちんとした「論理」が世界共通の言語になるということをおっしゃってました。

一言で「日本酒」といっても、日本酒そのものに内包されている課題から、さらには日本自体の課題、国際化とは何かということにまで繋がっていくものであることをお話していただき、大変奥の深い講演となりました。
また、いただいたレジュメもとても充実したものであり、これで日本酒についての認識が少し変わった気がしました。

なお、講演後の懇親会では、液体なのに冷えた容器に注いだ瞬間にみぞれ状になる「みぞれ酒」と、純米大吟醸の備前雄町を、メンバー全員で存分にいただきました。
お料理も、「うお清」さんに無理をお願いして、低予算ながら、すばらしいお料理を出していただき、お酒とのマリアージュを堪能できました。
今回お世話役で同席してくださった、営業担当の板東信夫氏の「みぞれ酒」のパフォーマンスを何度も見たいがために、口当たりのいい「みぞれ酒」を何杯も飲み、さらに純米大吟醸750mlを4人に1本の割合で振舞われ、酒飲みにはたまらない企画であったことを、付け加えておきます。